続・名探偵ポワロ

アガサ・クリスティ名探偵ポワロシリーズに公式パスティーシュがあったので読んでみた。

モノグラム殺人事件』というタイトルで、読み終わった後に何がモノグラムだったんだっけ?と思ってしまうくらいのモノグラムの印象の薄さも使い方もちょっとダメ感があると思うし、『ブロクサム・ホテル殺人事件』でもよかったんじゃないのって、逆に考えてしまう。

この本を手に取る人は多分アガサ・クリスティの小説を読破している人たちだし、みんなの頭の中にはクリスティのポワロがいてそれを期待しているはず、でもこのポワロには喋りにも行動にも何かしらの違和感があるので期待を裏切られた人も多いと思う。喋りに関してはもしかしたら翻訳の問題かもしれないが。

そもそもクリスティ小説の素晴らしいところは人間の本質を突いているところ。この本の後書きに解説があり、そこに

ミステリ作家のエドマンド・クリスピンは、クリスティーの成功の秘訣を問われて「簡潔明瞭です」と答え、クリスティーを“簡潔さの女王”とまで言っている(『アガサ・クリスティー読本』(早川書房))。

とあった。これはまさに人間性を理解しているからこその簡潔さなのではないかと思う。だからクリスティの小説は犯罪の動機や手法も理解しやすいし言い訳がましい説明などはほぼなく謎が解ければ単純明快になる。でもこの『ブロクサム・ホテル殺人事件』ではなく『モノグラム殺人事件』にはまどろっこしい説明やら言い訳やらがあるし、それをポワロに説明させている。おまけに事件が解決してもなんだか釈然としない。

というわけで評価は星二つ★★☆☆☆、シン・名探偵ポワロを期待したいところ。