メカ・サムライ・エンパイア

韓国系アメリカ人のピーター・トライアス氏による歴史改変小説『メカ・サムライ・エンパイア』がとてもおもしろかった。前作『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』とは趣きが異なり、残虐かつグロテスクな描写が少ないのは寂しいが、前作では少ししか登場しなかった巨大メカ(人型巨大ロボット)が思う存分出て来るのが何と言っても楽しい。巨大メカ同士の戦いがまさに眼前で、というより読み手のわたしも同乗して戦闘してるかのような気分になるバトルシーンには熱くなった。

巨大メカだけではなくて、5人乗りのカニ型メカやアメリカの半分を領有するナチスドイツが開発した巨大バイオメカなども登場する。バイオメカは文庫本の表紙にも描かれているまるで怪獣のようなロボットなのだが、これがホントに怪獣のようで恐ろしい。もちろん『パシフィック・リム:アップライジング』の“オブシディアン・フューリー”とは異なり中にはちゃんと人が乗っている。でもそれが尋常ではない……そこがなんとも言えず作者に感服する。

 

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ストーリーはと言えば、前作と同じ立場で読み始めると少し混乱する。主人公たちがどこに与して、どの立場で暮らしているのか、そこが前作と決定的に異なり、それがまたおもしろい。視点が変われば見えてくるものも違ってくる。そして今作は主人公の少年の成長が描かれていて、その少年の程々の出来損ない具合には大いに共感できた。それと五分の四くらい読んだところでも、この話にどう落ちがつくのか全く予想が出来なかったのに終わってみれば心地よい読後感を得られたのもよかった。だけどその一方でストーリーの根底には無常観が漂っていて、そこはかとない不安のようなものがある。だからこそこの物語に惹かれるのだろうなとも思った。

 

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続編もとても楽しみ!

 

 

 

メカ・サムライ・エンパイア 上 (ハヤカワ文庫SF)

メカ・サムライ・エンパイア 上 (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 追記:わたしがこの本を読んでいた時に聴いていた音楽は『パシフィック・リム』のサントラと『パシフィック・リム  アップライジング』のサントラとアンダーソン・パークの『Malibu』。どれもぴったり。実は映画『パシフィック・リム  アップライジング』には『Malibu』に入っている“Come Down”が流れるシーンがある。

 

「パシフィック・リム」オリジナル・サウンドトラック

「パシフィック・リム」オリジナル・サウンドトラック

 
パシフィック・リム アップライジング

パシフィック・リム アップライジング

 
Malibu

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