ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン

アジア系アメリカ人ピーター・トライアスの小説『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』を読み終えた。

表紙が巨大ロボットの絵でロボットメインの話かと思いきや、それは設定の一部に過ぎなかった。第二次世界大戦を日本とドイツが勝っていたらというストーリーで、そこには今の日本人から見て決していい国だとは言えない日本合衆国があった。戦前の日本ってこういう感じだったのかもと思わずにはいられなかった。1988年の日本合衆国が舞台で主人公はアメリカ生まれの日系アメリカ人の子どもたち、日系日本人一世。

なぜ1988年だったのか、と不思議に思ってたんだけど後書きを読んでわかった。1979年生まれの著者が8歳から2年間韓国で過ごしたことがこの本の出発点になったと書いてあった。だいたい1987〜1989年ということ。88年は韓国で初めてオリンピックが開催された年で、それを機に韓国が変わったと聞いたことがある。オリンピック以前は一般の女性は化粧すらしていなかったと、今では男性アイドルが化粧しているのが普通の時代で、今の若い韓国人には考えられないだろうね。もちろん日本文化も一切禁止されていたはず。その頃の日本はというとバブル時代。だから最初に1988年というのを見たとき、バブリーな日本合衆国が描かれているのかとちょっとドキドキしたけどもちろん全然そんなんじゃなかった。

この小説で一番気に入っているのはエピローグを読んで全てがすっと理解出来るところかもしれない。そこでこのストーリーの美しさを感じられた。もちろん巨大ロボットや携帯ガジェットはとても日本的で、そういうのがあったかもしれないと思わせてくれるのは素晴らしい。

歴史改変小説については友人から教わっていたけど、読んだのはこれが初めてで、こんなおもしろいものだとは思わなかった。実は歴史に疎いので歴史改変小説は読んでもあまり理解出来ないと思っていた。でもそんなことはなかった。

この小説の精神的正編のフィリップ・K・ディックの『高い城の男』も是非読まなくては。あと友人にかつて勧められたキム・スタンリー・ロビンソンの『The Years of Rice and Salt』(残念ながら日本未翻訳)も。

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