不安は自由のめまい

テッド・チャンの短篇集『息吹』を途中少しめげてしまい時間がかかりましたが読了しました。

「商人と錬金術師の門」はとても面白い話でした。さすがだなと感心しつつ一気に引き込まれました。情景が鮮明に目に浮かぶのは文章の上手さなのでしょうね。映画を観た時のように場面場面を思い出せます。前作でいうと「バベルの塔」的な作品のような気がしました。

「息吹」は読んでいてちょっとめまいがしそうでした。なんとも言えません。

「予期される未来」は超短編ですね。名状しがたい予言機です。

「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」、これがネックでした。読みながらかつてソニーが販売していたメールソフト「Post Pet」を思い出さずにはいられなかったし、リヴリー(架空の生物)を育成するオンラインブラウザゲームを思い出さずにはいられなかったからです。なんかすごくもやもやしながら読んでいて、やたらと時間がかかりました。

その後、1、2ヶ月ぐらい放置していた気がします。

「デジー式全自動ナニー」は、そういうことは十分に考えられることだなと思いながら読みました。

「偽りのない事実、偽りのない気持ち」を読んだあと、映画『3人のゴースト』を観たときの恐怖感を思い出しました。楽しい思い出だと記憶していたことは実はテレビの中の出来事で…というアレです。不都合な記憶を書き換えてしまったりしていそうで怖いですよね。だから記録することは大事なのかもしれない、特に何かあったときは、と改めて思いました。でも人は思い込みで生きているというのもあるので、書き換えた記憶のまま過ごした方がいい場合もあるのかもしれませんが。

「大いなる沈黙」はオウムを侮ってはいけないという教訓のような……?

「オムロファス」 はミステリィっぽくておもしろかったです。テンポよく読めました。

「不安は自由のめまい」が、これまた面白かったです。マルチバース的な概念なのか今ひとつはっきりしませんでしたが、途中からマルコフ連鎖を頭に浮かべて読んでました。最後のオチはタモさんがかつてストーリーテラーを担当していた番組を思い出しましたがよかったです。

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