異星入境

『異星入境』はテッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」が原作となった映画『メッセージ』の台湾版のタイトル。映画版原題の『Arrival』を意訳したもので、直訳すると「異星からの入国」かな。でも空港でDeparture(出発)を「出境」、Arrival(到着)を「入境」と書いてあったりするので直訳といえば直訳か。

その作品を含む短編集『あなたの人生の物語』を読みました。どれもおもしろかった。どうしてこんなおもしろい本をこれまで読まずにいられたんだろう。

 

バビロンの塔

宇宙が見えたというか、塔のてっぺんからの件りは真理なのではないかと思った。ある意味で世界はそうあるのではないか、と。心地いい読後感。

理解

こんなこと考えたこともなかった。『アルジャーノンに花束を』をちょっと思い出したけど、そんなレヴェルじゃなかった、異次元。  

ゼロで割る

オイラーの等式がきっかけになったとか。ある式の証明をみてその式の美しさに感動したことがあるひとならわかるはず。残念ながらわたしにはその経験がない。同級生がある式をみて「美しい」と言ったのを耳にしてビビったことはある。 

あなたの人生の物語

正直にいうと最初意味がわからなかった、過去なのか未来なのか現在なのか、バラバラで。宇宙からやってきた「それら」とのコンタクトの部分に関してはすごく面白いし、「それら」の文字には興味あるところで、わたしは読みながらアラビア書道的なものをイメージした。実際に作者が思い描いた文字をみることができないのを残念に思う。この作品に関しては作者の「作品覚え書き」を読んでようやくその本質を理解できた気がする。

七十二文字

最初ここはどこで何が起こっているのか訳がわからないのだけれど、読み進めて行くとわかる。これもまたすごいな、と思った作品。 

人類科学の進化

短編中の短編。科学の進歩で見える未来は人それぞれ。

地獄とは神の不在なり

作者の考え、というか、書いてあることにものすごく同意した作品、天使が出てくるファンタジィなんだけど。わたし自身は偶像化された神を信仰する習慣もなく、無宗教で生きているのでどうでもいいと言えばどうでもいいのだけれど、本当に同意した。テッド・チャンはすごい。

顔の美醜について  ー  ドキュメンタリー

どちらかというと醜のほうから書かれている気がする。美のほうにいる人間が云々カンヌンと、言葉を濁して書かないけど、そういうこと。